平日は仕事や勉強で睡眠時間が削られ、週末になると昼過ぎまで寝てしまう。そんな「寝だめ」を、日頃の睡眠不足を解消するための常套手段としている方は多いのではないでしょうか。そして、「平日に髪にかけた負担を、週末の睡眠で取り戻せるはずだ」と、薄毛対策としても期待しているかもしれません。しかし、残念ながら、この週末の寝だめは、薄毛対策としてはほとんど効果がないばかりか、かえって体のリズムを乱し、髪の健康を損なう原因にさえなり得るのです。平日の睡眠不足によって蓄積されていく、いわば「睡眠の借金」のことを「睡眠負債」と呼びます。週末に長く眠ることで、この睡眠負債による眠気やだるさといった症状は、ある程度は解消されるかもしれません。しかし、睡眠不足によって失われた成長ホルモンの分泌や、乱れた自律神経のバランス、蓄積されたストレスといった、髪の成長を妨げる根本的なダメージを、寝だめだけで完全に帳消しにすることはできません。さらに大きな問題が、「体内時計の乱れ」です。私たちの体には、約24時間周期で心身のリズムを刻む体内時計が備わっています。平日は毎朝7時に起き、週末は昼の12時に起きる、といった生活を繰り返していると、この体内時計は大きく狂ってしまいます。これは、毎週のように時差ボケを経験しているのと同じ状態です。体内時計が乱れると、ホルモンの分泌リズムや自律神経の働きも不安定になります。その結果、夜になってもなかなか寝付けなくなったり、眠りが浅くなったりして、睡眠の「質」が著しく低下してしまうのです。結局、週末に長く眠ったとしても、それは質の低い睡眠であり、髪の成長に必要な深い眠りが十分に得られていない可能性があります。そして、月曜日の朝には、狂った体内時計を無理やりリセットしなければならず、体に大きな負担がかかります。薄毛対策として本当に重要なのは、週末にまとめて眠ることではなく、毎日できるだけ一定の時間に寝て、一定の時間に起きるという「規則正しい生活リズム」を保つことです。たとえ睡眠時間が少し短くとも、毎日同じリズムで生活する方が、体内時計は安定し、結果的に質の高い睡眠と、健やかな髪を育むことに繋がるのです。