近年、「痩せたら髪の調子が良くなった」という話を耳にすることがありますが、医学的な観点から見ると、肥満と髪の健康にはどのような関連があるのでしょうか。今回は、長年薄毛治療に携わってきた（架空の）内科医、佐藤先生にお話を伺いました。「確かに、肥満、特にメタボリックシンドロームの状態は、全身の健康に様々な悪影響を及ぼしますが、それは頭皮や髪にも例外ではありません」と佐藤先生は語ります。「肥満に伴う高血糖や脂質異常症は、血液の粘度を高め、全身の血行を悪化させる傾向があります。頭皮は毛細血管が非常に多い場所ですから、血行不良の影響を受けやすく、毛根への栄養供給が滞ることで、髪の成長が妨げられる可能性は十分に考えられます。また、肥満の方は皮脂の分泌が過剰になることがあり、これが毛穴の詰まりや炎症を引き起こし、頭皮環境を悪化させる一因にもなり得ます」。では、痩せれば必ず髪は生えるのでしょうか。「それは一概には言えません」と先生は指摘します。「健康的なダイエットによって適正体重に戻り、血行や皮脂分泌、ホルモンバランスなどが改善されれば、頭皮環境が良くなり、髪が健康に育ちやすい状態になることは期待できます。しかし、薄毛の原因は様々です。AGA（男性型脱毛症）のように遺伝や男性ホルモンが強く関与している場合、ダイエットだけで顕著な発毛効果が得られるとは限りません。また、無理なダイエットによる栄養不足は、むしろ抜け毛を悪化させます」。先生は、髪の変化は体全体の健康状態を映す鏡のようなものだと付け加えます。「痩せたことで髪に良い変化があったと感じる場合、それはダイエットによって体全体の健康状態が改善された結果の一部と捉えるのが自然でしょう。もし薄毛が深刻な悩みであるならば、自己判断せずに、まずは皮膚科や薄毛治療専門のクリニックを受診し、原因を特定し、適切なアドバイスや治療を受けることが最も重要です」。