「痩せたら髪が生えた」という声が聞かれることがありますが、これには医学的な背景がいくつか考えられます。肥満、特に内臓脂肪が多い状態は、体全体の健康だけでなく、頭皮環境や髪の毛の成長にも悪影響を及ぼす可能性があるのです。まず考えられるのが、血行不良の問題です。肥満傾向にある人は、血液中のコレステロールや中性脂肪の値が高くなりやすく、血液がドロドロの状態になりがちです。これにより、全身の血流が悪くなり、頭皮への血行も滞る可能性があります。髪の毛の成長に必要な酸素や栄養素は、血液によって毛根にある毛母細胞へと運ばれます。そのため、頭皮の血行が悪くなると、毛母細胞が十分に栄養を受け取れず、髪の毛が細くなったり、成長が妨げられたりして、結果的に薄毛につながることが考えられるのです。また、肥満は皮脂の分泌を過剰にする傾向があります。頭皮の皮脂が過剰になると、毛穴が詰まりやすくなり、炎症を引き起こしたり、雑菌が繁殖しやすい環境を作ってしまったりします。これは、脂漏性脱毛症の原因の一つともなり得ます。さらに、ホルモンバランスへの影響も無視できません。肥満、特に男性の場合、体脂肪が増えると女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が増加し、男性ホルモンであるテストステロンのバランスが崩れることがあります。このホルモンバランスの乱れが、間接的に脱毛に影響を与える可能性も指摘されています。したがって、健康的な方法で適正体重まで痩せることは、これらの問題を改善する可能性があります。血行が促進され、皮脂分泌が正常化し、ホルモンバランスが整うことで、頭皮環境が改善され、健やかな髪の毛が育ちやすい土壌が作られることが期待できるのです。