自毛植毛は薄毛治療の有効な選択肢ですが、その効果や適応、限界について、正しい知識を持つことが重要です。今回は、長年植毛手術に携わる(架空の)専門医、鈴木先生にお話を伺いました。「植毛の最大のメリットは、やはり自分自身の髪を使うことによる自然な仕上がりと、生着すれば半永久的に効果が持続する点です」と鈴木先生は語ります。「AGAの影響を受けにくい後頭部などの毛髪を移植するため、移植した毛はその後も生え続けます。カツラや増毛のように、定期的なメンテナンスの手間や費用がかからないのも利点と言えるでしょう」。しかし、誰にでも無制限に適用できるわけではない、と先生は指摘します。「植毛は、あくまで『今ある髪を移動させる』技術です。全く新しい髪を作り出すわけではありません。そのため、移植に必要なドナー(採取元)となる髪の毛が、後頭部や側頭部にある程度残っていることが前提となります。薄毛が広範囲に進行し、ドナーとなる髪が十分に確保できない場合は、満足のいく結果が得られない可能性もあります」。また、仕上がりの密度にも限界があります。「元の髪と同じ密度を完全に再現することは、現在の技術では難しい場合があります。特に広範囲の薄毛をカバーしようとすると、密度がやや低く感じられることもあります。そのため、カウンセリングでは、患者さんの希望と、現実的に達成可能なレベルについて、しっかりとすり合わせを行うことが重要です」。費用が高額であることや、手術である以上、ダウンタイムや合併症のリスクがゼロではないことも理解しておく必要があります。「植毛は魔法ではありません。しかし、適応のある方が、経験豊富な医師のもとで適切な手術を受ければ、長年の悩みを解消し、生活の質を大きく向上させる可能性を秘めた治療法です。メリットとデメリット、そして限界を正しく理解した上で、ご自身にとって最善の選択をしていただきたいと思います」。

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