女性の薄毛治療において、内服薬（飲み薬）の使用は、男性の場合と比べて選択肢が限られ、より慎重な判断が求められます。男性のAGA治療で広く使われているフィナステリド（プロペシアなど）やデュタステリド（ザガーロなど）といった内服薬は、女性、特に妊娠中や妊娠の可能性のある女性には禁忌とされています。これらの薬は、男性ホルモンであるDHT（ジヒドロテストステロン）の生成を抑える作用がありますが、男子胎児の生殖器の発育に異常をきたすリスクがあるためです。したがって、自己判断での服用はもちろん、これらの薬に触れることさえ避けるべきとされています。では、女性が使える薄毛治療の内服薬は全くないのでしょうか。一部のクリニックでは、特定の条件下で、医師の厳格な管理のもと、他の治療で効果が見られない場合に、別の種類の内服薬が処方されることがあります。例えば、「スピロノラクトン」という利尿薬（もともとは高血圧などの治療薬）が、抗アンドロゲン作用（男性ホルモンの働きを抑える作用）を持つことから、FAGA（女性男性型脱毛症）など、男性ホルモンの関与が疑われるケースで、適応外使用として処方されることがあります。しかし、これも本来の用途とは異なる使い方であり、むくみや生理不順、電解質異常などの副作用のリスクも伴います。また、髪の成長に必要な栄養素を補う目的で、パントテン酸カルシウムやケラチン、アミノ酸、ビタミンなどを配合したサプリメントに近い位置づけの内服薬（パントガールなど）が用いられることもありますが、これらは医薬品として発毛効果が明確に証明されているわけではありません。いずれにしても、女性が薄毛治療で内服薬の使用を検討する場合は、必ず専門医に相談し、その必要性、効果、リスクについて十分な説明を受け、納得した上で、医師の指示に従って服用することが絶対条件です。安易な自己判断や個人輸入などによる内服薬の使用は絶対に避けるべきです。