これって噂のAGA？

物心ついた時から、私の髪はいつも細くて、柔らかくて、量が少なかった。体育の授業で汗をかけば前髪は額に張り付き、プールの後は友達の半分くらいのボリュームしかない自分の髪を見て、子供ながらに落ち込んだことを覚えています。「薄毛」という言葉を知ってからは、それが自分に与えられたラベルのように感じられ、長い間、大きなコンプレックスとして心に重くのしかかっていました。新しい美容院に行くのはいつも緊張したし、友人から何気なく「髪、猫っ毛だね」と言われるたびに、どきりとしていました。風が吹く日は、前髪が乱れて地肌が見えないか、ということばかりが気になって、心から楽しめない。そんな自分が、本当に嫌でした。転機が訪れたのは、20代後半のことです。信頼できる美容師さんとの出会いでした。私が恐る恐る「生まれつき髪が少なくて…」と悩みを打ち明けると、彼は私の髪を優しく触りながら、こう言ったのです。「確かに細くて柔らかい髪質だけど、すごく綺麗な色で、光に透けると素敵だね。この軽さを活かせば、外国人みたいな、ふんわりしたニュアンスのあるスタイルが作れるよ」と。その言葉は、目から鱗でした。私はずっと、自分の髪の「ない」部分ばかりを見て、それをどうにかして「ある」ように見せようと必死だったのです。でも彼は、私の髪の「ある」部分、つまり、その髪質だけが持つ魅力を見つけて、それを「個性」として認めてくれました。それから私は、自分の髪と向き合う姿勢を変えました。無理にボリュームを出そうとするのではなく、この軽やかで柔らかな質感を活かすにはどうすればいいかを考えるようになったのです。重いロングヘアはやめて、動きの出やすいレイヤーの入ったボブにしました。スタイリングも、カチッと固めるのではなく、柔らかいワックスで毛先に束感を出す程度に。すると、友人から「その髪型、雰囲気に合っててすごく良いね」と言われることが増えたのです。もちろん、今でも自分の髪がフサフサだとは思いません。でも、以前のようにコンプレックスでがんじがらめになることはなくなりました。髪は、私という人間を構成する、ほんの一部です。髪の量で私の価値が決まるわけではない。そう思えるようになった時、私はようやく、自分の髪を、そして自分自身を、少しだけ好きになることができたのです。