二十代後半の鏡に映る自分の姿に絶望していた私が、藁にもすがる思いでフィナステリドの服用を決意してから一年が経ちました。毎朝一錠、ただそれだけの習慣が、私の人生をこれほどまでに明るく変えてくれるとは、当時は想像もしていませんでした。これは、薄毛というコンプレックスに苦しんでいた一人の男が、科学の力で自信を取り戻すまでの三百六十五日の全記録です。これから治療を始めようか迷っている誰かの背中を押すことができればと思い、包み隠さずお話しします。服用開始一ヶ月目。正直に言うと、この時期が一番辛かったです。期待とは裏腹に、抜け毛が減るどころか増えたように感じたからです。いわゆる「初期脱毛」です。医師から説明は受けていましたが、シャンプーのたびに手に絡まる髪を見ては、「本当にこれでいいのか」「騙されているんじゃないか」という疑念が頭をもたげました。しかし、ここでやめてしまっては全てが無駄になると自分に言い聞かせ、祈るような気持ちで薬を飲み続けました。副作用については、性欲減退などの噂を気にしていましたが、私の場合は特に体調の変化を感じることはありませんでした。三ヶ月目。ようやく変化の兆しが見え始めました。初期脱毛が落ち着き、朝起きた時の枕元の抜け毛が激減したのです。それまでは毎朝コロコロで掃除するのが日課でしたが、数本程度にまで減っていました。そして何より、髪に「コシ」が出てきました。以前は猫っ毛のようにへたっていたトップの髪が、ドライヤーで乾かすと根元からふんわりと立ち上がるようになったのです。鏡で見てもまだ劇的な見た目の変化はありませんでしたが、手触りの変化は確実にモチベーションを上げてくれました。「薬が効いている」という確信を持てたのがこの時期です。六ヶ月目。久しぶりに会った友人に「なんか雰囲気変わった?若返った?」と言われました。自分でも、気になっていた頭頂部の透け感が明らかに改善しているのを感じていました。合わせ鏡で見ても、地肌の肌色が目立たなくなり、黒々とした密度が増していました。生え際のM字部分にも、産毛から成長したような短い毛が生え揃ってきており、風が吹いても前髪が割れるのを気にしなくて済むようになりました。この頃から、帽子なしで外出することに抵抗がなくなり、おしゃれを楽しむ余裕が生まれました。定期検診でのマイクロスコープ画像でも、毛穴から太い毛がしっかりと生えているのが確認でき、医師からも「順調ですね」とお墨付きをもらいました。そして一年後の今。私は薄毛の悩みをほぼ忘れて生活しています。もちろん、フサフサだった高校生の頃に完全に戻ったわけではありませんが、年相応かそれ以上の毛量を維持できています。何より嬉しいのは、精神的な安定です。「ハゲていく恐怖」から解放されたことで、仕事にも趣味にも前向きに取り組めるようになりました。